山梨県に3Dプリンタ製滑り台完成

山梨県北杜市清春芸術村に3Dプリンタ製の滑り台 「ホワイト・ループ」が完成

山梨県北杜市の芸術文化施設である清春芸術村が行う「こどものための建築プロジェクト」の第2弾として、「ホワイト・ループ(White Loop)」と名付けられた3Dプリンタで制作された滑り台が完成した。
建築家でVUILD(ヴィルド)を主宰する秋吉浩気氏が設計した3Dプリンタ製滑り台は、今まで清春芸術村が力を入れてきた「アート」「建築」に加え、さらに「遊び」の要素がプラス。これから迎える本格的なAI時代を前に、芸術文化と「遊び」という側面から、子供たちの感性を育むため設置された。

ホワイト・ループ – White Loop

  • 設計:VUILD(秋吉浩気、伊勢坊健太、須藤望)        
  • 製作:VUILD (花田泰史、小西陽二)
  • 設計期間:2023年11月~2024年2月 
  • 制作期間:2024年3月~6月
  • 対象年齢:3~5歳  / 高さ(最頂部):2メートル
  • 3Dプリント:DigitalArchi(松岡康友、立川博行)
  • 構造監修:Arup(金田充弘、後藤一真)

プロジェクト概要

  • プロジェクト名:「こどものための建築」プロジェクト                                        
  • コンセプト:子供がまず最初に触れる“建築”をつくる。
  • 狙い:AI時代を生きる子供たちが、 遊び・建築・アート で感性を磨く。
  • 背景にある思い:子供たちに小さい頃から「本物の“建築”に触れて欲しい」
  • 「“建築”という世界があることを知って欲しい」という思いからスタート。
  • プロデューサー:吉井仁実(公益財団法人清春芸術村 理事長)
  • ディレクター:白井良邦(慶應義塾大学SFC 特別招聘教授)
  • 敷地:清春芸術村(山梨県北杜市長坂町中丸2072)

プロジェクトディレクター白井氏のコメント
「これから本格的に到来するAI時代を生きていく子供たちにとって、感性を育むことは、今以上に大切で重要になってきています。では感性はどのようにして磨かれていくものなのでしょうか。その答えのひとつは“遊び”の中にあると言えます。今回のプロジェクトは、南アルプスのほど近く、自然豊かな山梨県北杜市にある芸術文化施設からの依頼で始まりました。最初の話し合いのなかで、小さな子供たちにも「本物の“建築”に触れて欲しい」「“建築”という世界があることを知って欲しい」という考えに至り、世界的に著名な建築家、谷口吉生氏や安藤忠雄氏の設計した美術館が建つ敷地内に、新たに子供のための遊びの場を建築家が提供するという「こどものための建築」プロジェクトがスタートしました。その第2弾の設計をお願いしたのは、若手建築家の中でも他とは一線を画す活動をする秋吉浩気さんです。秋吉さんは大学院でデジタルファブリケーションを学び、卒業後は建築テック系のスタートアップ企業<VUILD>を創業、「建築の民主化」を目指す活動をしています。今回は巨大な3D プリンタを使い、今まで世界でも前例のない「メビウスの輪」のようなそれ自体が自立する滑り台を生み出しました。ぜひ美術館へ実際に脚を運んでもらい、子供たちに体感して欲しいと願っています。

建築家秋吉氏のコメント
「こどものための建築」と聞いて、真っ先にイサム・ノグチの彫刻を思い浮かべた。先日、札幌の大通公園にある『ブラック・スライド・マントラ』を見に行った際、子供たちが螺旋状に旋回しながら、登っては降りてを繰り返し遊んでいる姿が印象に残った。この情景を思い出しながら、「白樺の木々の間をすり抜け、大きく面的に旋回しながら、子供達が登ったり降りたりして、互いに追いかけ合っている姿」を頭の中に思い描いたのが最初の着想であった。また同時期に読んでいた絵本『バーバパパ』からも大きな影響を受けた。愛らしい膨よかな身体が、変幻自在に変化し、時には動物に、時にはジェットコースターへと変化し、親しみやすい色と形で子供達を柔らかく包み込む。興味深いのは、彼らの家づくりの方法だ。自らの体に樹脂を巻きつけ、体を膨らました後に小さくなって抜けることで、有機的な空間を創り出していく。この発想は、樹脂を溶かしながら積層し造形していく3Dプリンターによる家づくりのようであり、その先見性に驚かされた。この2つのインスピレーションから、樹脂3Dプリンターを用いて滑り台をつくるという方針が定まった。いざ様々な滑り台を観察してみると、滑りたくて登ったけれど逆走してくる子に戸惑ったり、滑りたくて並んだけれど横入りされて泣いたりと、滑り台を巡る希望と失望のせめぎ合いに直面した。この軋轢を解消するには、滑ると登るの間をシームレスにつなぎ、滑り台と階段の形を同一化すると良いのではと考え、現在の「メビウスの輪」のような形に辿り着いた。 白い洞窟のような空間に「潜り」、滑り台型の階段を慎重に「登り」、風景を見渡しながら「座り」、晴れやかな気分で「滑り」、また期待を膨らましながら「走る」。この一連の経験(シークエンス)こそが原初的な建築体験であり、この小さな建築で遊ぶことを通じて建築への興味が芽生えることを願っている。


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