米海軍、3Dプリンターで原潜部品を製造へ

金属3Dプリンターによる大型構造部品製造で、原子力潜水艦の建造スピードを加速

米海軍が原子力潜水艦の建造に3Dプリント技術を導入する計画を進めている。大規模金属3Dプリンターを活用し、従来の鋳造や鍛造では時間のかかる部品を短期間で製造可能にするのが狙いだ。

米国海軍は、今後数年で原子力潜水艦の建造を大幅に加速させるという目標を掲げており、2028年までに「コロンビア級」潜水艦を年1隻、「バージニア級」攻撃型潜水艦を年2隻建造する計画で、その生産力を支える中核として金属3Dプリンターによる部品製造に注目している。

このプロジェクトを支えるのは、防衛関連企業の技術投資を支援するため設立された「Maritime Industrial Base(MIB)」プログラムで、その中核パートナーとして General Dynamics Electric Boat とLincoln Electric(リンカーンエレクトロニクス)が選ばれている。
リンカーンエレクトロニクスは、オハイオ州クリーブランドに設置した大型金属3Dプリント施設「Additive Solutions」で、4台の最先端機「SculptPrint」システムを稼働させており、ワイヤ・アーク積層造形(WAAM)方式およびガスメタルアーク・エネルギー付与(GMA-DED)方式を用いて、潜水艦の船体部品や推進機構などの高強度かつ大型の金属部品を出力している。
この技術は、1回の造形で高密度かつ完全融合した金属部品を生成でき、従来の鋳造や鍛造よりも短納期・高精度・材料効率の改善を実現する。さらに、同社はワイヤ材料、電源、制御ソフトウェアまですべて自社製造しており、品質管理と供給安定性の面でも他社にない強みを持つ。

一方で、防衛産業への3Dプリント導入には課題もある。米海軍システムコマンド(NAVSEA)などの認証規格に適合させるため、材料データの蓄積やプロセス記録のデジタル化が求められており、リンカーン電気は政府・業界パートナーと連携しながらその整備を進めている。すでに同社は複数の金属材料でNAVSEAおよび民間認証を取得しており、今後はさらなる合金や構造形状への適用拡大を計画している。これらの成果は、造船分野に限らず航空宇宙、防衛、エネルギー産業など幅広い領域での応用が期待される。


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