インクジェット方式3DプリンタAGILISTA実機レポート


KEYENCEのインクジェット方式3Dプリンタ「AGILISTA-3100シリーズ」について、実務レベルのレポートをまとめてみました。

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2013年度秋頃より利用頻度が増してきたKEYENCEのインクジェット方式3DプリンタAGILISTAについて、2013年後半から2014年前半に掛けて実務利用してきた内容を、簡単なユーザーレポートとしてまとめてみました。ここで紹介するのはあくまで実使用例の一つとしてお伝えするものです。利用するユーザーの環境やデータ内容などによって様々な結果をもたらすものであり、下記のレポートが全ての結果に結びつくものではありませんことをご理解ください。

AGILISTA 基本仕様

型式:AGILISTA-3100
造形サイズ:297×210×200mm(A4サイズ×200mm)
解像度:635×400dpi
Z解像度:高分解能 15µm、標準 20µm
モデル材:AR-M2(透明樹脂)
サポート材:AR-S1(水溶性樹脂)
外形寸法:W944×D700×H1360mm
重量:188kg
使用周囲温度:18~25°C
使用周囲湿度:30~70%RH
電源:電源電圧 AC100-240V 50/60Hz、消費電力 最大750VA
インターフェース:Ethernet 10BASE-T/100BASE-TX
オペレーション:液晶カラータッチパネル
ソフトウェア:名称 Modeling Studio 造形データオペレーションソフト、型式 AGILISTA-H1-DVD
対応OS:Windows 7 64/32bit、Windows Vista 64/32bit、Windows XP 64/32bit
入力データファイル形式:STLファイル

本体について
好みが分かれる特徴的な筐体デザインのAGILISTA。本体内部の様子がこちら。

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造形は、写真にある中央のプレートにヘッドから噴射される樹脂をUV光により硬化させるインクジェット方式。専用材料カートリッジは本体右側ポケットに4本内臓され、お値段は約20万円弱(他メーカー同レベル機種と比較すると、やや高め?)

設置スペース
他の造形方式を用いたプリンターと比べ、後処理用機材などの設備が少なく済み、設置スペースは比較的コンパクトに収まると思います。

動作音・その他
動作音は決して小さくありません。小さなオフィスで利用する場合はかなり動作音が気になると思います。ただし、これは他のミドルレンジ以上の3Dプリンタでも同様ですね。動作音が気になる場合は、オフィス内への設置は避けられた方が良いかもしれません。また、サポート材の臭いが少しキツイため、造形中にもそれ相応の臭いを発しています。

 

専用ドライバ「Modeling Studio」について

好みの問題はあると思いますが、付属するドライバ「Modeling Studio」については、シンプルでとても使いやすく感じています。まだまだ改善点はありますが、同価格帯の海外製ソフトよりは使い勝手は良いのではないでしょうか?
基本的な設定項目は、「表面仕上げ」「造形品質」程度。モデル材の最適な姿勢(サポート材の設置方法)や造形プレートへの配置方法などは、ドライバ側で自動計算してくれます。また、万が一モデルデータに不備がある場合は、ドライバ上からある程度のレベルのデータ修復も可能です。ただし、修復精度は期待以上に高くありません。まず何より、3Dプリンタを利用する場合、エラーの出ないデータを造れることが大前提であると思えるため、ドライバ側の修復機能に頼るには限界があるのではないでしょうか。

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ドライバ側で指示した内容を本体側で確認し、造形スタート

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サポート材の除去について

アジリスタ関連広告では「水だけで簡単に溶けるサポート材」と言う文言が先行し、勘違いされている方がとても多いのではないでしょうか?
水溶性ではありますが、勘違いして下写真のように水道水で洗い流してしまうと大変なことになりますのでご注意くださいw

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このように水道水で流してもサポート材はキチンと取れません。
逆にやってはいけない行為です!造形物表面が白濁し、造形物細部に入り込んだサポート材が綺麗に除去できなくなってしまいます。

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キチンとサポート材を除去するためには、専用の洗浄液に浸すか、サポート材が十分に溶解した水道水(写真のように濁った水)に長時間浸す必要があります。通常、一晩程度は漬けるようにしています。
短時間でサポート材を除去することが難しい素材なので、この辺りは是非メーカー側に改善を望みたい部分ですね。

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洗浄液である程度サポート材の除去が出来た場合でも、表面には独特のヌメリがあるため、そのまま手にすると油汚れのような感触が残ります。開発会議などの現場において、デザインモックを利用した意匠確認などを行う際にはちょっと厄介です。
また、
洗浄液等で取りきれない細部に残ったサポート材を除去するため、我々は毎回アルコールに浸しています。短時間で除去するためには、超音波洗浄機も利用した方が良いでしょう。ただし、材料の問題からか肉厚が十分でない部分などは変形してしまう場合もありますので、サポート除去時には十分ご注意ください。

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サポート材の影響による表面仕上がり

サポート材が付かない部位は、高精細な積層が可能でとても綺麗にあがりますが、サポート材が付着した部分はどうしても表面が荒くなり(マット調になり)積層跡が目立ちます。
下写真の通り、サポート材が付着したフィギュア前面部分は表面が荒れて白濁していますが、サポート材が付かない背面は洗浄だけで綺麗に仕上がっています。

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頭頂部左側はサポート材が掛かっていた部位で、右側はサポート材が付かなかった部位。

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積層跡の目立つ部位は、サポート材の有無だけに限りません。これは他のプリンターでも同様に、モデルの積層方向にも大きく影響します。下写真はハイレゾリューションモードでプリントした造形物ですが、拡大するとかなり積層跡が目立ちます。写真右は積層跡が確認し易いように塗料を噴きかけたモノです。

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下写真右側のスカルでも、サポート材の有無による表面仕上がりの差が確認できます。写真左にあるマット仕上げのスカルは、同価格帯のStratasysプリンタObjetシリーズで造形したモノです。

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他の高精細機種との比較

造形方式の異なるプリンタ同士で単純比較するのは意味がありませんが、高精細プリントが必要な造形物の場合、いかに細かく綺麗に仕上げることができるかは重要です。ここはカタログスペックだけでは単純に比較が難しい部分ですね。
様々な製品のデザイン開発を行うid.artsでは、デザインモック以外にも、腕時計や宝飾品の鋳造原型制作などに3Dプリンタを活用しています。原型製作で利用頻度が高いPerfactoryやDWSは、超高精細な造形を得意とするプリンタです。下写真は、同一データからアジリスタとPerfactoryで造った二つの造形品(アジリスタ:上、Perfactory:下)を比較したモノです。
造形方式も材料も異なれば、利用する目的も変わってくる3Dプリンタ。造形機器による違いがどの程度あるのかを単純比較するための素材として、下記2点を並べてみました。

アジリスタ(ハイレゾリューション/グロッシーモード)による造形

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Perfactory4による造形
多少手を加えれば鋳造原型としてそのまま利用できるレベルの仕上がりです。

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後処理に関する問題

造形後の仕上がりの問題は上記の通りですが。デザインモックなどに利用する場合、表面の仕上げ加工はとても重要です。荒れた表面仕上げの問題を回避するためには、研磨・塗装等の後処理が重要ですが、アジリスタの材料はかなり柔らかいため、あまり表面仕上げには向いていないと感じています。
同じアクリル系樹脂でも他社の造形品と比較するとかなり柔らかい材料に感じています。(材料成分については専門外のため、詳しい方がいらっしゃれば是非ご教授ください!)

どのくらい柔らかいか?っていうと、このくらい

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それでも頑張って仕上げ塗装したモノが、下記の造形品です。写真中央がアジリスタにて造形したミニチュア家具です。※ これらの造形物に関する詳細はこちらからご確認いただけます。

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下中央にある黄色のパントンチェアが塗装後の状態です。この写真では分かりませんが、表面の積層跡は完璧に除去できていません。同じインクジェット系でもProjetやObjetで造形したモノは綺麗に表面の積層跡を除去することができました。

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まとめ

以上の通り簡単なユーザーレポートをまとめてみましたが、これはあくまでユーザー事例の一つとしてお考えください。今回のレポートでネガティブな部分もお伝えしましたが、造形品の内容や利用方法によっては適した使い方が色々あると思います。
メーカーに対しては、材料問題の改善や他材料への適応など様々な要望がありますが、今後の改善に期待したい部分ですね。
と、偉そうに呟いてみましたw

 

3Dプリンタの機種選定について

3Dプリンタは価格も性能も多種多様で、利用目的に応じて様々な選択肢があります。
実際「どの機種を購入したら良いか分からない」「機種毎にどんな特徴があるのかよく分からない」と言う方も多くいらっしゃると思います。
id.artsでは、「導入前に色々な機種で造形品の比較をしてみたい」と言う企業に対し、様々な機種を用いた検証用資料(データ制作、造形品、ベンチマーク等)の提供を行っています。
また同時に、3Dプリンタの導入支援も行っています。「どんなプリンタを選択したら良いかわかない」という事業者に対し、業態や目的に応じた実務レベルの導入案のご提供から、データ制作や運用方法に至るまで、トータルでサポートしております。気になる方はお気軽にお問い合わせください。

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